令状主義と電波首輪理論の成立可能性

 盗聴・盗撮は「秘密の保護(電波法59条)」や「通信の秘密を侵す罪(有線電気通信法14条)」等の様々な法律に抵触している可能性が高いようです。(下記参照)
http://www.h3.dion.ne.jp/~busters/t-8.htm
警察も通信の傍聴する際には「傍聴法」にしたがって、裁判所からの令状にもとづいています。傍聴法にもとづかない場合は傍聴ではなく、単なる違法「盗聴」になります。

このようなことを前提にして現在行われているNシステムやTシステムによる撮影行為を判断してみます。

現存のNシステムは車両の番号・運転者・助手席同乗者の写真を撮影する装置であるといえます。Nシステムを通過した車輌(2輪を除く)・運転者・助手席同乗者はすべて記録され、警察の手配車リストに即座に照会されることになっています。手配車輌が通過した場合、手配車両と判明と同時に車種・所有者・メーカーなどが割り出され、付近を巡回中のパトカーや捜査車両に通知されます。(これは「N号ヒット」と呼ばれています。)N号ヒットがあった場合は、無線で連絡がされるシステムになっています。TシステムにもNシステムと同様の機能があります。

NシステムやTシステム設置に関して、ひとつの大きな問題点と考えられるのが「令状主義」における矛盾です。すでに述べたように、警察による傍聴については裁判所からの令状が必要です。このことは傍聴法で規定されています。令状がない場合は傍聴ではなく、単なる違法「盗聴」になります。しかしながら、警察によるNシステムをつかった撮影には裁判所からの令状がでていません。警察によるNシステムによる撮影には令状がないことを考えると、「盗撮」になるのではないかという疑いがもたれるわけです。いったん、「強制処分は裁判官が事前に発した令状に基づかなければならない。」という令状主義の原則が無視されれば、捜査機関が捜査に名を借りて権限を濫用し、不当に人権を侵害することを予防するという令状主義の趣旨自体がそこなわれることになります。なぜ、警察の傍聴には傍聴法という法律があるのに、NシステムやTシステムによる撮影に条件付けをする法律がないのでしょうか。Nシステム、Tシステムによる常時撮影(盗撮??)が裁判所からの令状なしで可能であると法律上「解釈」されるならば、傍聴(盗聴)は令状を取らなくてはならないが、令状をとらなくても盗撮はしてもよいのではないかという解釈を持つ人がでてくる恐れがないとはいえません。

 次に個人情報保護、プライバシー保護に関係する問題点があります。NシステムTシステムは警察官が個人的に特定の者の動向を監視することも出来るシステムであるということにも注意しなければなりません。特定車両がNヒットすると、車両に関する情報が照合されます。照合データの中に個人情報があれば、車両持ち主の住所・氏名が判明してしまいます。つまり、対象者(ターゲット)の車両番号を入手するだけで、個人情報保護法を無力化できる可能性が高いのです。
 現在、警察が通信事業者から個人情報(位置情報を含む)を入手する際には正式な令状が必要です。このようにして法律上保護している個人情報であるのに、1度でもNシステムやTシステムに「Nヒット」して情報照合されれば、個人情報がすぐに判明しまう可能性が高いのです。このような手段で入手された個人情報が流用されないという保証は一般に明示されていないのです。NシステムやTシステムの撮影対象車両が裁判所からの令状がでている容疑者にかかわる車両だけでないことが判明した具体的な例として2006年のNシステムの情報流出事件があげられます。この流出事件によって、撮影対象が不特定多数の車両であること、公共のPC以外にも撮影データが保存されていることなどが判明しました。その後、NシステムやTシステムの運用についての明確な説明が必要であるという意見が多くなっています。
 Nシステムに関する訴訟について、東京地裁平成13年2月6日(判例時報1748号144ページ以下判決) では、「犯人を検挙することは警察の責務であり、 Nシステムがこれに寄与することは明らかであるから」 という理由から、Nシステムを適法と解したようです。
(下記『Nシステムと刑訴法学説 (2005年 8月15日)』を参照しました。)
http://www.azusawa.jp/legalmind/r20050815.html
 「Nシステムが犯人検挙に寄与する。」ことが正当性の理由になるというのであれば、今後、「携帯電話の位置情報システムが犯人検挙に寄与する。」という理由で、携帯電話の位置情報(位置登録情報)が常時監視されてもよいという解釈がでてくる可能性も高いのではないでしょうか。現段階では、携帯電話の位置情報は総務省からでた、『電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン26条解説改定版』等で保護・情報入手制限されていて、各電話会社等は個人情報保護を理由に警察等からの正式な令状がないと情報を提供しないことになっています。

 『電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン26条解説改定版』では主に利用者のプライバシーを保護するための措置として次の部分を明確にしています。

1.利用者の意志に基づいて位置情報の提供を行うこと
2.位置情報の提供について利用者の認識・予見可能性を確保すること
3.位置情報について適切な取扱を行うこと
4.第3者と提携の上サービスを提供する場合は、約款等の記載により利用者のプライバシー保護に配慮すること

このガイドラインが守られていれば、携帯電話が追跡用発信機として使われることはないはずです。しかし、「犯人検挙に寄与する。」ために令状のないNシステムによる盗撮が合法であると解釈可能なのであれば、令状のない携帯電話の位置情報(位置登録情報)を使った個人調査も合法であると解釈可能なのではないでしょうか。つまり、『電波首輪理論』が成立する可能性がでてくるわけです。

今後、Nシステムに対する法律上の判断には注目が必要となりそうです。

※参考※
携帯電話の位置情報を利用した個人情報調査の1例に関して『電波首輪理論と携帯電話 「傍聴法は盗聴法?」』(右記)http://infowave.at.webry.info/200507/article_1.html ならびに
『量子暗号化技術の進展と電波首輪理論「共謀罪と傍聴法・個人情報保護法の無力化」』
(下記)を参照してください。
http://infowave.at.webry.info/200609/article_1.html

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この記事へのコメント

イギリスでも違法・越権盗聴に対しては厳しい批判あり
2011年07月18日 20:40
『英警視庁トップが引責辞任』2011年7月18日(月)8時43分配信 共同通信 を参照しました。(下記URL)
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2011071801000120/1.htm(以下引用)
『【ロンドン共同】英日曜紙ニューズ・オブ・ザ・ワールド(廃刊)による盗聴事件で、ロンドン警視庁のトップ、****警視総監が17日、事件に関与したとして逮捕された同紙の元副編集長をPR顧問として雇っていたことなどを受け、引責辞任した。同庁に対しては、これまで盗聴事件の捜査に消極的だったとの批判があり、事件は捜査を指揮する最高幹部の辞任という異例の事態に発展した。』(以上引用)

イギリスでも法律に基づかない違法・越権盗聴に対しては厳しい批判があるようですね。日本ではどうでしょうか。ひそかに違法・越権盗聴が横行しているという事実はないでしょうか。危険な状況は絶対ないとは言いきれません。

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